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【カリフォルニア中央区連邦裁判所】日本企業が米国で裁判を起こされた際、150万ドルを請求する裁判の訴状を受領して欲しいとの申入れを断った件

依頼内容

カリフォルニアに電子部品を輸出(契約書は交わさず)していた日本企業が米国取引先から販売代金を支払って貰えず、逆に、電子部品に欠陥があるとして、カリフォルニア連邦裁判所で150万ドルの損害賠償請求の裁判を起こす内容の訴状の受取りを要求された案件に関して、適切に解決するとの依頼内容。

対応と結果

まず、米国の裁判では、訴状については、裁判所からではなく、原告が被告に直接送達することになっています。裁判所から訴状副本が送られてくる日本の裁判所とは、送達の方法が異なります。
米国における訴訟提起の段階で、日本企業が訴状を受け取るべきかどうかは、初動の対応として非常に悩ましいところです。

上記の日本企業様は、米国には支店、営業所等の拠点がなく、代理店(Agency型)をとおして米国市場に電子部品を展開していた状態でした。
日本企業様は、米国で裁判を起こされるにあたり、当初、米国のカリフォルニア州のロイヤーに受任依頼をしようとしていたところでしたが、いったん、正式な依頼はしないで、訴状を受け取る立場にないとしてご返送いただきました。

その後、米国取引先のロイヤーから、直接、国際郵便で日本企業の本社まで訴状が郵送されてきて、こちらは誤って受領してしまいましたが、弊職の指示により、特に、何も対応しないで頂きました。

日本企業様のご要望としては、もし、どうしても裁判になる場合は、アメリカでの裁判は訴訟コストが嵩むので、できれば、アメリカではなく日本国内の地方裁判所(東京地裁)で裁判をしたいとのことでした。
米国取引先とは、この間も、並行して別製品の取引は継続していたという事情もありましたので、時間を稼いで交渉による解決の途も、同時にご検討いただくことにしました。弊職にて正式に受任し、米国企業との間で任意の和解交渉を開始しました。

他方で、米国取引先の方は、痺れを切らしたのか、いわゆる外国送達に関するハーグ条約をつかって日米の外務省をとおして東京地裁から米国裁判所の訴状が送達されてきました。東京地裁から連絡があるまで4カ月を要しました。

しかしながら、その際は、敢えて受領しないで頂いて、同時に、弊職が代理人となって日本企業から米国企業を被告として、東京地方裁判所に同一事案で裁判を提起して、米国と日本の二重起訴の状態を作りました。東京地裁からの訴状が、同じく、上記のハーグ条約のルートで今度は米国に送られることになりました。これにより、何れの国の裁判所でも訴訟係属が適法に成立しない状態がさらに6ヶ月以上も続きました。

その間も交渉を継続し、結局、いつまで経っても米国で裁判が開始しないことや、同一事案に関して日本で裁判を提起されてしまったことから、米国取引先の側からも大幅な譲歩を引き出すことができ、最終的に、米国取引先から相当の和解金を支払って貰う内容で双方和解して、日米の何れも裁判所の訴えも取り下げることにて終了しました。

弁護士のコメント

国境を越えて裁判する場合には、お互いに、自国のホームグラウンドで裁判ができた方が、有利であることは言うまでもありません。相手方からすれば、言語、法律、訴訟手続等が全て異なるいわば「敵地」の裁判所で勝負しなければならなくなる可能性が高いからです。
このように、どこの国の裁判所で紛争解決できるかという双方の力関係は、和解交渉におけるお互いの力関係に大きな影響を与えることが少なくありません。和解交渉が決裂すれば、言語、法律、訴訟手続などの全てが異なる相手方のホームグランドで戦わなければならない可能性が高くなってしまうからです。

本件において、米国企業が、話合いの前に、先んじてカリフォルニア連邦裁判所に裁判を提起してきたのは、和解交渉を有利に進めようとの意図があったからに他なりません。もし、この時点で、日本企業が、アメリカのロイヤーに正式に委任してしまっていたなら、このロイヤーが訴状を受け取った時点でカリフォルニア連邦裁判所での訴訟係属が正式に成立してしまいます。
また、ハーグ条約ルートを通さないで、国際郵便で送られてきた訴状に関しても、日本国は、ハーグ条約第10条(a)の郵送による直接送達に対して拒否を宣言していますので、送達として適法に成立していません。

さらに、次に、今度は正式にハーグ条約のルートを使って送達されてきた訴状に対しては、受領しないでおいて、同時に、日本国の東京地方裁判所に米国企業を被告として訴訟を提起しました。これにより、日米双方の裁判所において同一案件に関する訴訟が提起されることになり、異なる国で二重起訴されるという複雑な状態になりました。(なお、米国企業の側は、案件が異なるので二重起訴ではないと争っていました。)
そのようにして双方の力関係をいったん50対50に戻した上で、時間をかけて粘り強く交渉し、最終的には、米国企業から一定の和解金を支払ってもらうことで和解を成立させることが出来ました。

なお、本件事案は、日本の工場内における設計上・製造上の欠陥が主張されていたこと、他方で、米国市場において消費者に関わる製造物責任が問題とされる事案ではなかったこと、それら設計と製造のために米国企業のエンジニアが日本に派遣されており証人の多くが日本国にいると考えられることから、最終的には、日本国の東京地方裁判所に裁判管轄が認められそうな事案ではありました。この辺りは、米国取引先の側のロイヤーも認識していたと思われます。

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